平成最後の全国学力テストについてです。「全国学力・学習状況調査 平成31年 数学」

数学や数学教育
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令和元年、、、ではなく、平成31年に実施された全国学力・学習状況調査についてレビューします。平成最後の全国学力・学習状況調査ですね。
今年は英語の調査が初なので、話題性は英語に集中しています。ただ、数学もA問題B問題が統合されたり、本格的に新学習指導要領が考慮されているなあと思いました。

調査問題や調査結果をどう教育に授業に生かすかが、教育者の手腕だと思います。分析結果については公表されたら考察していきたいと思います。

投稿日:2019/04/19
最終更新日:2019/04/22

全国学力・学習状況調査とは

そもそも全国学力・学習状況調査について、少し概略を紹介します。

平成10年の指導要領により、ゆとり教育による学力低下がいわれました。OECDのPISA調査が発端ですね。そこで、文部科学省でも、学力について全国規模の調査を平成19年から開始しました。
開始とはいっても以前も全国規模の調査をやっていました。そのときは、全国学力調査という名のもと、昭和30年代に行っていました。

その昭和30年代で下位だった秋田県が教育改革を行って、H19からの調査では上位になっています。そのため秋田県は教育界でかなり注目されています。

では、この全国学力・学習状況調査の特徴について、平成31年中学校数学の解説資料()から引用します。

「全ての先生が、学習指導の改善・充実に活用できるものを目指して作成しています。」本調査は、小学校においては第5学年まで、中学校においては第2学年までに、十分に身に付け、活用できるようにしておくべきと考えられる内容を出題していますので、調査の対象学年だけでなく、全学年を通じた学習指導の改善・充実を図るための参考とすることができます。

解説資料について 特徴 p.1

中学校3年生に実施しているとはいえ、中3の内容は進度が影響するため問えません。なので、中学校1年生2年生の内容が主です(中には文脈によって小学校の内容や小学校の調査では問えない小6の問題も入ってきます)。後ほど詳しく紹介しますが、授業の内容としても参考になるものが多いです。
このことから、PISAやTIMSS調査など個々の学力を分析するだけでなく、授業改善に生かすことを目指していることがこの特徴の文面からわかります。

だから、全国学力・学習状況調査は悉皆調査(抽出調査ではなく対象者全員が受ける)ものとなっているんだと思います。

中学校数学 平成31年のポイント

今年から基礎基本的な問題のA問題と活用問題のB問題という枠がなくなりました。この点について解説資料では以下のように書かれています。

平成29年3月に公示された中学校学習指導要領(平成29年告示。以下「新学習指導要領」という。)は,教科等の目標や内容について,生きて働く「知識及び技能」,未知の状況にも対応できる「思考力,判断力,表現力等」,学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力,人間性等」という三つの柱に基づいて再整理されており,これらの資質・能力の三つの柱は相互に関係し合いながら育成されるものという考え方に立っている。

平成31年度以降の調査問題では,こうした新学習指導要領の考え方への各教育委員会や各学校の理解を促すため,従来の「主として『知識』に関する問題」と「主として『活用』に関する問題」に区分するといった整理を見直して,一体的に調査問題を構成することとした。

中学校数学科の調査問題作成に当たって p.6

特に私は、新学習指導要領の3本の柱の一つである「生きて働く知識及び技能」という点において生きて働くということを問うためには従来のように分けていては問えないということになったのではないかと解釈しています。

もう一つ大きなポイントとして初めて調査問題の枠組みが変わりました。以下に画像で載せます。

調査問題の枠組み p.7

この中で数学的なプロセスが大きく変わっています。
これまでの枠組みでは数学的なプロセスというのがα、β、γという分類がなされており、それぞれは問題の取り組み方としての分類でした。αは日常生活での活用場面、βでは数学世界での活用場面、γはそれらをひっくるめた活動場面といった認識です。
しかし、今回のⅠ、Ⅱ、Ⅲという分類は、数学的モデル化過程の日常場面から数学化する場面「Ⅰ」、数学の舞台で考察する場面「Ⅱ」、その結果を日常と絡めて解釈したりその結果を発展したりする場面「Ⅲ」に分かれたと解釈しました。
これはある種、数学的な問題解決の型というものを提示しているのかなあと思います。これから付随する論文なども含めてさらに考察していきたいと思いますが、この記事ではこのぐらいにしておきます。

注目する問題

今回私は大問6,7について載せていきたいと思います。

6 事象の数学的な解釈と問題解決の方法(冷蔵庫)

ざっと流れを説明すると、冷蔵庫を購入するときに最初の経費と年間の経費を考慮していくという問題です。これを時間を\(x\)、総費用を\(y\)とした一次関数として見ていくというものであり、H28の電気自動車とガソリン自動車の問題に似ていると思います。その中でも(1)に注目しました。

この問題は、\(y\)切片をP、\(x=8\)のときのグラフ上の点をQとしたときの、Qの\(y\)座標とPの\(y\)の差の意味を問うています。つまり、PQを斜辺とする直角三角形の縦の長さの意味ですね。
中学生と接していても思うのですが、このような解釈の問題は課題が多いです。一つは関数の問題というのは、数を文字に抽象化する段階に加えて、「文字を変数としてみること」と「\(xとy\)の変数の動きを図的に表すこと」という二つの思考が必要となってきます。これをどうやって私が獲得していったか不明ですが、関数の問題はかなりハイレベルな思考が必要とされると思います。そこを指導者が理解しておかないと、指導が画一的になってしまったり、「なんでこんなこともわからないんだ」ということになってしまうと思うので注意が必要です。

その思考を経て、それを具体的な事象へと解釈することが理解できると思います。どのぐらいの5つの選択肢の分布になるか、調査結果を待ちたいと思います。

7 証明することや反例をあげることを通して、統合的・発展的に考察すること(四角形の条件変え)

この問題は上のような正方形ABCDがAF=CEになることを発端に、発展させていくという問題です。
(1)では正方形ABCD(E:点A,Bの中点、F:点B,Cの中点)のときにAF=CEになることの証明について
(2)では正方形ABCDを平行四辺形ABCDに発展させたときにAF=CEが保存されるかどうか。(3)ではAF=CEが保存されるときの四角形ABCDの条件を考えるという流れです。

(2)では平行四辺形ABCDにしたときには、証明のAB=CBであることが必ずしもいえないため成り立ちません。それを下のような図2を示して、正方形ABCDと同じように書いていったときにAF=CEとならないから成り立たない、という「反例の意味」について問うている問題です。

なかなか反例ということについては授業という流れの中で扱うことはそれほど難しくはないですが、生徒の反応が見れない中で反例を問いにするということで注目に値する問題だと思います。これがどのぐらいの正答率なのか、とても興味があります。

そして、反例があるから発展できない!で終わるのではなく、だったらAF=CEということが保存される四角形(条件)ってあるの?ということが(3)です。この(1)〜(3)の発展の流れというのは授業でもお手本となるものだと思います。

(3)は、(2)の考察したとおり平行四辺形であるとAB=CBであることがいえないので成り立ちませんでした。なのでAB=CBが成り立つのはどんなのかということで一番最初に思いつくのがひし形(1枚目)でしょう。ただ、AB=CBであれば証明はできるので、四角形ABCDがAB=CBであればどんなものでもかまいません。それだとあまりかっこよくないので、例えばAB=CB,AD=CDとなるようなたこ形の図形であればAF=CEであることは保存されます(2枚目、もちろん3枚目のように凹型四角形でも大丈夫です)。

動画も是非とも

実はYouTubeで数学についての解説動画をやっており、平成31年の全国学力・学習状況調査の解説もしました。是非とも参考にしてください。長いですが、その分1つ1つ丁寧に解説することを意識しています。

コメント

  1. […] 1つ1つ丁寧に解説することを心がけました。是非ご覧になってください。また、指導者向けに数学的プロセスなど深く掘り下げた記事も書きました、こちら(リンク先は別サイトです)。 […]

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